※「お経の表現」～仏心のあらわれ～　とほぼ同じ内容です。

その時、仏、長老舎利弗に告げたまはく。これより西方、十万億の仏土を過ぎて世界あり、名づけて極楽といふ。その土に仏まします、阿弥陀と号す。今現にましまして法を説きたまふ。（仏説阿弥陀経）

【西方浄土】

浄土真宗にとって、お彼岸とは阿弥陀様のお浄土です。仏説阿弥陀経には、お釈迦様が別れ往く智慧第一の舎利弗尊者に、阿弥陀様のお浄土と、今ここにはたらいておられる阿弥陀様のお救いを告げて往かれます。

そのお浄土を、この娑婆（思い通りにならない世界）よりはるか西方にあるといい、その国土は極楽といい、光り満ち溢れ、花咲鳥歌う美しい処であるとお説きになりました。

【そのままが真実】

それは、金塊の価値を知らない子どもに、金塊を様々な形に加工して与えると慶んで受取り、大切に保つが如き表現です。さとりの本質は何一つ変えずして、何とか私たちに真実を受取らせ、心を浄土に馳せさせたいとお説き下さったのでした。

【雨の日のお迎え】

ところが、水中の魚が陸地を求めないように、私たちはお浄土の話に背を向け、受取らずにきたようです。

ある日の朝、妻が登校前の息子に「今日は夕方には雨が降るから傘を持って行きなさい」と言いましたが、息子は「（今は）晴れているから傘なんか要らん」とつっぱねて行きました。ところが、学校が終わる頃になってやはり雨は降ります。その時子どもは慌てます。私は「自業自得だ。勉強になるから放っておいたらいい。」と言いました。しかし、妻は傘を持って学校まで迎えに行き、母子二人、ちょっと照れながらも嬉しそうに家に帰ってきました。

【一緒に帰ろう】

私たちは、今が思い通りだと救いを求めません。ところが、いつでも雨が降るように、いつでも老病死の苦悩は訪れます。その時、本当の拠所、帰る家を持たない者は慌てます。しかし、阿弥陀様だけは「自業自得」とは仰らずに、今ここに立ち続けて「一緒に帰ろう」と何度も何度も喚び続けて下さいました。それが、今現にましまして法を説きたもう「南無阿弥陀仏」のお念仏です。

【仏心のあらわれ】

「西方」も「光満ち花咲鳥歌う」という表現も、時代に合わない、子ども染みた表現だと思ったこともありました。しかし、それはこうまでして、こうまでしてあなたを連れ帰りたい、あなたの帰りを待っている阿弥陀様という親があり、お浄土という帰る家があることを告げておられる、さとりの顕れであったのです。

 

それを私たちのご先祖は、本堂を建て、家にはお仏壇を安置し、墓には「倶会一処」と刻み、お彼岸には法座を開いてまで、老病死を恨み、独り命終わっていこうと涙する私たちに「独りじゃないぞ」と告げて下さっていたのでありました。

 

 

 

 

 

＜第18期大海組連続研修会「お彼岸」まとめの法話『連研だより』2015年9月掲載＞